ライブ配信の投げ銭は経費にできる?税務上のポイントを徹底解説!

ライブ配信が新たなビジネスとして確立される中、「投げ銭(ギフティング)」はライバーの活動を支える重要な収益源となっています。しかし、この投げ銭、実はライバー自身や所属事務所の側から見て、「支払う」場合にも、税務上のメリットがあることをご存じでしょうか?

今回は、ライブ配信における投げ銭の税務上の扱い、特に「経費」として計上できるケースやその注意点について、確定申告を見据えるライバーや経営者の皆さんに分かりやすく解説します。

投げ銭は「事業の費用」?税法上の形式的な考え方

まず大前提として、税法上、経費として認められるのは

事業を行う上で発生した費用

であり、個人的な趣味や娯楽のための支出は経費になりません。

投げ銭を支払う行為が経費になるかどうかは、その目的が「自身のライブ配信活動(事業)に直接関連しているか」が問われます。

そのため、

『自身がお友達の応援』

『自信が推しへのプレゼント』

として他のライバーに投げ銭をした場合、基本的には「個人的な支出」とみなされ、経費にはなりにくいです。

しかし、例外的に事業関連性が認められるケースもあります。

関連性が認められて経費精算できることにはメリット・デメリットがあるため、各パターンで検証し、可能性についてご案内いたします。

経費精算するメリット・デメリット

「確定申告って面倒そう…」

と感じる方もいるかもしれませんが、

投げ銭を多くしているライバーや事務所にとって、経費精算には大きなメリットがあります。

メリット

  • 所得税・住民税の負担軽減: これが最大のメリットです。投げ銭が事業活動の一環として経費と認められれば、その分、あなたの事業所得が低くなります。所得が低くなれば、それに課される所得税や住民税の金額も減るため、結果として手元に残るお金が増えることになります。特に、たくさん投げ銭をしている方ほど、税金が安くなる効果は大きいです。
  • 正確な事業収支の把握: 経費をきちんと計上することで、事業全体の収入と支出が明確になり、より正確な経営状況を把握できます。今後の活動計画や投資判断にも役立ちます。
  • 税務調査時の安心感: 日頃から適切に経費を記録し、申告していれば、万が一税務調査が入った際にも、根拠をもって説明でき、安心して対応できます。

デメリット

  • 記帳の手間: 経費を計上するためには、投げ銭の内容、日付、金額、目的などを詳細に帳簿に記録する必要があります。領収書(購入証明)の保管も不可欠です。これらは正直なところ、手間がかかる作業です。
  • 税務上の判断の難しさ: 投げ銭が「事業の費用」として認められるかどうかは、個々のケースによって判断が分かれます。曖昧な目的や、個人的な支出と判断されるリスクも存在します。不適切な計上は、税務署から否認され、追徴課税の対象となる可能性もあります。

ライバーが「お友達ライバー」に投げ銭するケース

ライバーとして活動している方が、同じくライバーである友人や知り合いの配信枠で投げ銭をする、いわゆる「枠回り」と呼ばれる行為。これが経費になる可能性はあります。

接待交際費として経費にできる場合

  • 目的が明確な場合: 投げ銭が、将来的なコラボレーションの打ち合わせや、お互いの活動を盛り上げるための協力関係構築など、事業上の関係性を維持・強化する目的で行われたと明確に説明できる場合。
  • 金額の妥当性: 投げ銭の金額が、その目的から見て社会通念上妥当な範囲内であること。あまりに高額な場合は、個人的な贈与とみなされるリスクが高まります。
  • 記録の重要性: 誰の配信に、いつ、いくら投げたか、そしてその目的を明確に記録しておくことが重要です。

広告宣伝費として経費にできる場合

  • 相互プロモーション: 自分の配信で、投げ銭した相手の配信について言及してもらう、SNSで紹介してもらうなど、相互に集客効果を狙う目的で投げ銭を行った場合。
  • 対価性: 投げ銭に対して、明確なプロモーション行為の対価性があることを示せる場合。
  • この場合も、契約書や取り決めがあればより明確ですが、口約束であっても記録を残すことが重要です。

ポイント

いずれのケースも、

「なぜこの投げ銭が自分の事業に役立つのか」という合理的な説明

ができなければ、税務署に否認される可能性があるので注意が必要です。

事務所やマネージャーが「育成のため」に投げ銭するケース

ライバー事務所やマネージャーが、所属ライバーの育成やプロモーションのために投げ銭を行う場合、これは経費として計上できる可能性が非常に高いです。

  • 広告宣伝費としての計上:
    • 目的: 所属ライバーの認知度向上、人気獲得、フォロワー増加を目的とした投げ銭であれば、広告宣伝費として経費計上が可能です。これは、テレビCMやWeb広告と同様に、集客やブランディングのための投資とみなされます。
    • 具体例:
      • 新人ライバーの初配信や節目となる配信で、盛り上げのために投げ銭をする。
      • イベント参加中の所属ライバーをランキング上位に押し上げるために投げ銭をする。
      • 他の大手ライバーの枠に所属ライバーが登場する際に、存在感を出すために投げ銭をする。
    • 記録の徹底: どのライバーの育成・宣伝のために、いつ、いくら投げ銭をしたのかを詳細に記録し、その目的を明確にしておく必要があります。
  • 育成費・研修費としての計上(限定的):
    • これは稀なケースですが、例えば、他のライバーの「投げ銭が多い配信」を研究するために、具体的な金額を投げ銭して、その反応や効果を分析する場合など、明確な研修目的があれば検討の余地があるかもしれません。ただし、個人的な視聴目的と混同されないよう、明確な業務指示と報告が求められます。

事務所やマネージャーが支払う投げ銭は、事業目的が明確であれば、経費として認められやすい傾向にあります。

配信アプリ会社が海外の場合に注意すべき「消費税の問題」

配信アプリは世界中に存在し、その運営会社が海外にあることも少なくありません。

ここで注意が必要なのが、消費税の扱いです。

日本の消費税を納める事業者は、国内での課税仕入れにかかる消費税を「仕入れ税額控除」として、売上にかかった消費税から差し引くことができます。

しかし、海外の配信アプリ会社を通じてギフトを購入した場合、そこに課されているのは日本の消費税ではありません。

多くの場合、海外の消費税(付加価値税、VAT、GSTなど)であり、これは日本の消費税法上、原則として「仕入れ税額控除」の対象になりません。

つまり、海外のアプリ会社からギフトを購入して経費計上した場合、支払った消費税分は日本の消費税の控除対象とならず、実質的に消費税分を負担したままとなる可能性があります。

  • 対策: 契約している配信アプリ会社の所在地を確認し、もし海外法人であれば、この消費税の問題に留意しましょう。インボイス制度が始まった現在、適格請求書の要件を満たさない海外発行の領収書では、消費税の控除はできません。
  • 顧問税理士への相談: 海外のサービス利用に関する税務処理は複雑になりがちです。必ず顧問税理士に相談し、適切なアドバイスを受けてください。

確定申告の方法

投げ銭を経費として計上する場合、確定申告では以下の点に留意しましょう。

  1. 帳簿付けの徹底: いつ、誰に、いくら投げ銭したのか、そしてその目的(例:広告宣伝費、接待交際費、会議費など)を、日付、金額、相手、内容と共に詳細に帳簿(会計ソフトやエクセルなど)に記録しておきましょう。領収書(購入証明)も必ず保管してください。
  2. 勘定科目の選定:
    • 広告宣伝費: 自身のプロモーション目的の場合
    • 接待交際費: 事業上の関係者との交流目的の場合
    • 会議費: オンラインでの打ち合わせ等で発生した場合(ただし高額すぎないこと) など、最も適切な勘定科目で仕訳を行います。
  3. 証拠書類の保管: ギフト購入のレシートや明細、アプリ内の購入履歴のスクリーンショットなど、実際に費用が発生したことを証明できる書類を必ず保管しておきましょう。
  4. 事業所得として申告: ライバーの収益は、原則として事業所得または雑所得として確定申告が必要です。経費を計上することで、所得税や住民税の負担を軽減することができます。

まとめ

ライブ配信における投げ銭は、一見すると個人的な支出に見えがちですが、事業上の目的が明確であれば、経費として認められる可能性があります。

特に事務所やマネージャーによる投げ銭は、プロモーション活動の一環として経費計上しやすい傾向にあります。

しかし、その判断は税務上の専門知識を要します。

特に海外の配信アプリを利用している場合は、消費税の控除に注意が必要です。疑問点があれば、必ず顧問税理士に相談し、適切な確定申告を行うようにしましょう。